アメリカンフットボールのプロリーグ設立に向けて

2010年に日本でアメリカンフットボールのプロリーグを設立する――2000年の元旦に自分に課した目標です。この目標の実現に向けて、この場をお借りしてこれまでの仕事を振り返り、アイデアを整理し、構想を練り、自らのモチベーションを鼓舞していきたいと思います。

Saturday, March 11, 2006

エンターテインメントとしての価値(2)

 しばらく期間が空いてしまったが、前回の続きを述べたいと思う。
 前回は、3つあるエンターテイメントとしての価値のひとつとして、アメリカンフットボールの「(1)競技性・試合の質」といった側面の価値について言及した。これは、スポーツという競争行為やアメリカンフットボールという競技から生み出される本質的な価値であり、オリジナルなユニークな価値であるといえよう。

 今回述べる「(2)選手やチームの特性(選手のキャラクター、チームの持つイメージ)」「(3)試合会場の演出(プロモーション手法、試合会場の演出や雰囲気、イベント、チームマスコット)」は、(1)で述べた本質的な価値をコアとする付随的な価値であり、アメリカンフットボールに限らず見せ物として試合を行うスポーツであればいずれにせよ含有し得る価値だとは思う。しかしながら、アメリカンフットボールという競技特性からみても他のスポーツに比べてこれらの付随的価値を付加しやすい特性を持っていることもあり、また一般的にアメリカンフットボールは競技のルールが分かりにくいという印象をも持たれてしまっていることからみても、これらの価値を訴えることが重要となるであろう。

(2)選手やチームの特性

 自分がシーガルズのアシスタントGMとしてチームのプロモーションを担当していた時、「競技のルールが分からないけど、ひいきの選手がいるから試合に来る」「アメフトについては詳しく知らないけど、ウチの会社のチームだから応援にきた」といった観戦動機をよく耳にした。よくありがちな手法ではあるが、選手やチームの特性から派生するイメージを売りにして集客を図る手法は、「ルールが分かりにくい」というイメージを持たれてしまっているフットボールにおいては、(3)同様に有効となる。

 よくありがちなプロモーションとして「わかりやすいルール解説」的なアプローチからはいる手法が見受けられるが、アメフトのルールを短時間かつ少ない情報で伝えることはかえってノイズとなり、余計に分かりづらいという印象を持たれかねない。個人的には競技ルールを知らない人にルールを理解させることは、他のスポーツに比べ「コミュニケーション・コスト」が余計にかかると考える。だとすれば、一層のことTV解説や試合パンフレットにおいては中途半端なルール解説はせずに、その分コミュニケーション・コストがさほどかからない「選手やチームの特性」に関する情報を提供した方が、最初のフックとしてはより有効であると考える。そのフックから競技のルールに興味を持った人に対しては、きちんとわかりやすくディープに解説された情報を提供する機会を用意すればよい。時としてコミュニケーションにおいては、「誰」に対して「何を」提供するのかという戦略を明確にし、情報の「選択と集中」を行うことが必要となるのだ。

 若干話が脱線したが、「選手やチームの特性」について以下のように魅力要因を分解してみた。

<選手の特性>

・プレー特性:独自の優れたプレースキルやフィジカルを有していること

・ビジュアル:体型、顔、装着物などが魅力的であること(フットボールの場合には防具を装着することにより、この魅力要因が高くなり得る)

・キャラクター(言動含む):選手の性格や人間性による要因

<チームの特性>

・プレースタイル特性:どのような試合戦略・戦術を得意とするのか

・所属選手・コーチ:チームに所属する選手やコーチの特性が時にチームの特性となることもある

・プロモーション手法:(3)で言及する要素。チームが対外に向けて表現しているもの(ロゴ、WEB、パンフレット)が発するイメージ

・歴史:設立経緯、転機、勝敗・戦績、劇的な試合、象徴的な選手など過去のイメージが蓄積され現在のイメージを醸し出している

・所有者やスポンサー:所有オーナーやスポンサー企業のイメージ

・フランチャイズ:ホームタウンを構える地域のイメージを含有しているケースもある


(3)試合会場の演出

 フットボールのルールを知らずとも、ひいきの選手やチームがなくとも、その試合会場の雰囲気やイベントでフットボールという競技やチームに興味関心を抱くケースがある。スポーツを興行として捉えた場合、フィールド内で行われる試合や競技パフォーマンス以外の、スポーツという価値とは全く異なる性質のいわば演劇や映画に近い人工的なエンターテイメントの価値を創出することが出来る。
 特にフットボールという「間」が多い競技においては、その「間」でこの類の価値を上手く創り出すことが可能となる。自身がシーガルズでチームマネジメントを行っていた頃の経験則ではあるが、以下は考えられ得る演出可能な要素である。

・チアリーダー
誤解を恐れずに言えば、エンターテイメントという側面においてはチアリーダーは選手のパフォーマンス同様に見せ物である。したがって見せ物として価値を生むパフォーマンスやビジュアルや演出が必要となる。しかしながら、あくまでも付随価値であり、競技や試合の価値を補うものでなければならない。よく日本の試合で見られるような試合の内容と全くシンクロしていない演出や、強引な応援を誘導するようなマイクパフォーマンスは、エンターテイメントという観点でみれば論外といえよう。

・チームマスコット
子供に受けが良く、会場の雰囲気を醸し出すチームマスコット(着ぐるみ)は、現在では多くのチームで取り入れていることが多いが、そもそも「なぜチームマスコットを有するのか」ということを深く考えているであろうチームはあまり見受けられない。「他チームがやっているから」「アメリカではあたりまえだから」という理由であれば、そのコストは他のプロモーションなどに回した方が得策だ。もしチームマスコットにコストをかけるのであれば、その存在価値をきちんと考える必要がある。そもそもの価値とはチア同様に試合における付随的価値であり、エンターテイメントという観点で言えば選手やチア同様に「パフォーマンス」を生み出す必要がある。だとすれば、どのようなパフォーマンスが「受けるのか」という視点から逆算して、「どんなキャラクターが」「いつ」「どこで」「何をするのか」ということをきちんと設計する必要がある。

・音楽
音楽については、「メロディーやリズム(さらには歌詞)」もしくは「その曲に対する意味づけ」という視点で曲を選択する必要がある。「メロディーやリズム」による選曲とは、「素晴らしいプレーを盛り上げる曲調である」「勝利の喜びをより増幅させるリズムである」とった考え方だ。「曲の意味づけ」とは、「QueenのWe are the champion=スーパーボウルやW杯で使用される勝った時のお約束感」「スターウォーズのダースベイダーのテーマ曲=悪役登場」「チームで昔から使われた曲=歴史や伝統」といったその曲が持つ特有の意味やイメージであり、その意味を活用することで状況に応じた演出が可能となる。かつてシーガルズでは「NFLファン層の集客」という目的により、意図的にNFLのTVや試合で使用されている曲を試合会場で使ったことがある。いずれにせよ「そのシーンや演出の目的に照らして適切なメロディーか」という視点が選曲においては必要だ。

・映像
試合会場の設備による制約を受けるが、単に映像を流すだけでなく、上記の要素や下記のイベントと連動しているとなお良いだろう。これはどこかで述べたいと思うが、日本のスタジアムにおいてはエンターテイメントという観点のなさから、映像に関する設備はかなり劣っていると思う。「いや、大抵のビッグスタジアムにはオーロラビジョンがある」と思われるかもしれないが、単に「映像を流す装置を設置した」にすぎず、そのような設備の設置目的にエンターテイメントという思想が盛り込まれていないため、さほどの価値を発揮できていないことが多い(当然流す映像のコンテンツや使い方にもよるが)。

・イベント
大なり小なり「イベント」次第で、試合の価値をいかようにも増幅することが可能だ。どこかで網羅的にアイデアを紹介したいとは思うが、経験則ではアイデアそのものよりも「まずやってみる」ことが重要だと考える。先日米国で視察したNBAの試合では、「タイムアウトの時間に、会場で盛り上がっている観客にピザを無料でプレゼントする」というなんとも単純なイベントではあるが、MCやピザを客席に持って行くスタッフのキャラクターによりかなり盛り上がるイベントとなっていた。アイデアそのものが重要なのではなく、まずはやってみることであり、さらにはイベントに関わる人のサービスマインドやキャラクターが重要となるのである。

・IT
これもどかで言及したいと思うが、スポーツにおいてはまだまだITの活用が進んでいるとは言えない。厳密に言えば、活用が進んでいないのではなく「その特性を生かし切れていない」といったほうが性格であろう。今ではどのチームにもWEBサイトや携帯HPがあるが、その程度の活用では紙というメディアを電子に置き換えたに過ぎず、本当の意味でのITの活用とは言えない。データのマイニングやワントゥーワンの情報提供など、ITの活用による価値の創出にはまだまだ余地があると考える。

以上、アメリカンフットボールのエンターテイメントとしての価値についていくつかの視点から考察してみた。次回は、アメリカンフットボールの「広告としての媒体価値」について考察してみたいと思う。

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